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知ってトクするオンライン診療のこんなこと

オンライン診療のいま:皮膚科クリニックでの実践レポート

新型コロナ(COVID-19)感染拡大期のオンライン診療

ふなくし皮膚科クリニック院長 舟串 直子 先生 【第2回】

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の急速な感染拡大に伴う規制緩和で、注目度が高まるオンライン診療。感染症予防だけでなく、通院や待ち時間の短縮といった利便性からも、オンライン診療を実施する医療機関は増加傾向にあります 1)。その一方で、対面診療と比べて得られる情報量が少ないというデメリットもあり、少ない情報量をどう補うかが課題となっています。2016年からオンライン診療に取り組んでいる埼玉県三郷市の「ふなくし皮膚科クリニック」院長・舟串直子先生に、オンライン診療をうまく活用するための工夫や、オンライン診療の展望について、お話を伺いました。

●画面を通して患者さんの生活環境を把握できるのがメリット

― COVID-19の流行により、貴院のオンライン診療に変化はあったでしょうか?

舟串:2020年4~5月の緊急事態宣言が発令されていた期間は、オンライン診療を利用する患者さんが増えました。ただ、感染予防対策としての利用が多かったので、感染拡大が一旦落ち着いた8月頃に、処方したお薬がなくなったタイミングで対面診療に戻った患者さんもおられました。

こちらからオンライン診療をお勧めしても、中には「先生に会いたいから」、「看護師さんとお話しするのが楽しみだから」来院したいとおっしゃる患者さんもおられます。また、小児の場合は乾燥による湿疹に対して保湿剤を処方していますが、保険外の負担が生じることについて賛同が得られないケースもあります。ですから当院では、「便利だから」「オンライン診療の適用だから」と一方的に話を進めることはせず、患者さん側の事情や気持ちをくみ取りながら、バランスをとってお勧めするよう心がけています。

― 前回、モニター画面では正確な視診が難しいというお話がありましたが、診察面ではどのようなメリットを感じておられますか?

舟串:オンライン診療中は画面に患者さんのご自宅の様子も映るので、患者さんの生活環境や家族構成、ご家族との関係性を把握できることは大きなメリットだと思います。例えば、アレルギー疾患でダニ対策が必要な患者さんの場合、ご自宅が畳なのかフローリングなのかを知ることで適切な生活指導につなげられます。

また、自分の診療を見つめ直す良い機会にもなったと感じています。オンライン診療では触診ができず、画面から得られる情報も限られているからこそ、それをカバーするための工夫が必要となります。その一つが「数値化」です。当院では蕁麻疹の症状がどの程度コントロールされているかを評価する質問表「蕁麻疹コントロールテスト(Urticaria Control Test)」を取り入れ、その結果を治療の評価に生かしています。こうしたツールを用いることで患者さんもご自分の状態を客観的に把握できるようになり、診療に対するモチベーションの向上につながるのではないかと期待しています。

●対面診療と組み合わせることで医療の質を担保する

― オンライン診療の導入を検討されている先生方に、アドバイスをお願いいたします。

舟串:自宅や職場にいながら受診可能なオンライン診療は、通院時間の確保が難しい、あるいは小さなお子さんを連れての通院が大変といった患者さんにとってメリットが大きいと思います。また、非対面で実施されるため感染症対策としても有効です。一方で、オンライン診療は対面よりも得られる情報が限られており、安易に適用すると医療の質の低下につながる懸念もあります。医療の質を担保するために、オンライン診療はあくまで対面診療を補完するものであり、初診・再診にかかわらず、必ず対面診察を組み合わせなければならないことを、医師と患者の双方が事前に共有しておく必要があると思います。

中には「簡単に薬を出してもらえるから」と、気軽に利用される患者さんもおられるかもしれませんが、患者さんの要望に引っ張られないように、医師は明確な基準を持って診療にあたることが大切です。厚生労働省が策定したガイドライン『オンライン診療の適切な実施に関する指針』 2)に則った診療を心がけるべきだと思います。

さらに、希望される方全員にオンライン診療を認めるのでなく、患者さんの病状や治療に対する理解度、ITリテラシーの高さなどを踏まえて、医師が患者さんの適性を確認することも大切なのではないでしょうか。

― オンライン診療の今後の可能性について、お考えをお聞かせください。

舟串:将来的には、パーソナルヘルスレコード(PHR)の活用がより進んでいくのではないかと思っています。遠隔モニタリングを用いた在宅酸素療法では、患者さんのバイタル情報をインターネット経由で医療機関のサーバーに蓄積し、管理されています。オンライン診療でも患者さん自身が計測した血糖、血圧、体重などのデータを管理し、診療日以外の状況を把握することで、診療の幅をより広げることができるのではないかと考えています。

また、聴診音をデジタル化して遠隔に送信できる機器など、さまざまな遠隔モニタリングデバイスの開発も進んでいると聞いています。テクノロジーの進化とともに改良が重ねられ、さらにより良い形へと発展する可能性を秘めた領域であり、特に若い先生方の積極的な参加を期待しています。新しい診療スタイルですから、今後もさまざまな問題が生じるかもしれません。しかし、医療者同士やオンライン診療システムを提供する企業と連携し、勉強会や情報交換をしていくことで改善につなげていけるのではないでしょうか。

社会全体のメリットを考えれば、私は患者さんに提供できる診療の新たな選択肢として、オンライン診療がCOVID-19 収束後も幅広く活用されていくとよいのではないかと思っています。診療科に限らず多くの先生方にも取り組んでいただいて、ガイドラインに則った診療で医療の質をしっかりと担保しながら、オンラインの利点を生かした医療を提供していけるようになればと願っています。

【診療計画の作成と同意取得について】

オンライン診療では本来、診療前に作成した「診療計画」を基に、オンライン診療の手順や情報セキュリティなどについて患者に説明し同意を得る必要がありますが 2)、COVID-19感染拡大下での時限的・特例的措置では不要となっています 3)。しかし、「オンライン診療を適切に実施するために、対面診療に比べて得られる情報が限られていること、そのため同一の医師による対面診療を適切に組み合わせることが求められることなど、オンライン診療の基本的な考え方を文書で示し、患者さんの理解を得ておくことが大切です」と舟串先生は話します。万が一のトラブルに備えて、「あらかじめオンライン診療の注意事項を明記した同意書を作成し、患者さんの署名をもらっておくのも良い方法」というアドバイスをいただきました。

1)厚生労働省. 第11回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会.資料2-2『令和2年7月~9月の電話診療・オンライン診療の実績の検証の結果』.令和2年11月2日(2020年12月7日アクセス)

https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/000690548.pdf

2)厚生労働省. オンライン診療の適切な実施に関する指針 平成30年3月(令和元年7月一部改訂)(2020年12月7日アクセス)

https://www.mhlw.go.jp/content/000534254.pdf

3)厚生労働省. 新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて令和2年4月10日事務連絡(2020年12月7日アクセス)

https://www.mhlw.go.jp/content/R20410tuuchi.pdf

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