オンライン診療のいま:皮膚科クリニックでの実践レポート
ふなくし皮膚科クリニック院長 舟串 直子 先生 【第1回】
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の急速な感染拡大を受け、注目を集めているオンライン診療。2020年12月現在、感染が収束するまでの時限的措置として初診での電話・オンライン診療が認められていますが、同年11月に開かれた厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」では、感染収束後も初診を含めた映像を伴うオンライン診療を原則解禁するという方向性が示されました1)。新たな生活様式の実践が進む中、オンライン診療をどう活用していけばよいのか、いち早くオンライン診療に取り組み始めた、埼玉県三郷市の「ふなくし皮膚科クリニック」院長・舟串直子先生に診療の実態や工夫について伺いました。
舟串:当院は2014年に開業し、皮膚科のほか花粉症、食物アレルギー、アナフィラキシーなどのアレルギー疾患にも対応しています。駅から近くアクセスが良いことや、女性の医師であることなどから、乳幼児からご高齢者まで幅広い年齢層の患者さんにご利用いただいています。
しかし患者さんの来院が集中すると、どうしても待ち時間が長くなってしまいます。来院から診察まで1時間以上お待たせする日も出てきたことから、それまでの来院順の診察から時間予約制に移行しました。しかし、今度は予約が取りにくくなり受診できない患者さんが出てきました。そこで、一人でも多くの患者さんを診察できるように、医院の混雑緩和を目的に2016年にオンライン診療を導入しました。
舟串:基本的には症状が落ち着いている患者さんに限り、症状に変化がないこと、同じお薬の継続で問題ないことを問診で確認する形で実施しています。それは、オンライン診療では正確な視診が難しいと感じるからです。パソコンのモニター上では、画質や光の加減によって患部の様子が実際とは異なって見える場合もあります。また、患者さんが上手く操作できず、患部がぼやけて映ることもあります。もちろん触診もできません。ですから個人的には、次の診察日までにお薬が足りなくなってしまう方にオンライン診療をご利用いただくのがベストではないかと考えています。
周知方法ですが、当院ではオンライン診療が適切だと思う方に私から直接お声がけして、了承されればオンライン診療に移行するという流れにしています。
舟串:まず私からアプリのインストールやユーザー登録、診察当日の受診の流れなどについてお話し、次に看護師がもう一度詳しくご説明します。さらに手順を明記した説明書をお渡しし、オンライン診療システムを提供する企業のサポートセンターの電話番号も案内します。また診察当日、予約時間にビデオ通話がつながらなかった場合はこちらからお電話するなど、二重三重にフォローしており、ご高齢でもリテラシーの高い方や、ご家族のサポートが得られる方は問題なく利用されています。
舟串:当院のホームページからオンライン初診外来を予約できるようになっています。ただ、実際に診療した経験から、受診歴のない初診患者さんと画面を通してコミュニケーションを取るのは難しいと感じています。例えば、蕁麻疹の患者さんがオンライン初診外来を受診された際、前医が処方した治療薬の継続処方を希望されたことがあったのですが、そのお薬で症状が治まっているかを確認すると、「かゆみがあります」とおっしゃったのです。当院に定期通院されている患者さんであれば、症状が改善されない場合は別の選択肢を考えたほうが良いという認識を共有できていますが、全くの初診患者さんとなるとまずその認識をご説明して薬の変更をご提案し、納得していただくというステップが必要になります。幸いこの患者さんはこちらの提案を受け入れてくださったので、オンライン初診の上限である7日分を処方しました。また、オンライン診療が「欲しい薬を手に入れるための窓口」にならないよう、オンライン初診外来の患者さんには必ず次の予約を取っていただいてフォローしています。
舟串:利用される患者さんは、皆さん「便利ですね」とおっしゃっています。現代社会では、仕事や介護、育児などの日常生活に忙しく、治療継続との両立に苦慮される方も多いと思われます。通院時間や待ち時間を短縮できる、会社の休憩時間に受診できるといったオンライン診療の利点を生かすことは、患者さんの日常生活に使える時間を増やすことにつながります。また診療以外にかかる時間のロスを少しでも減らし、皆さんの時間を他の活動に当てていただくことは、社会全体の経済的なメリットにもなるのではないでしょうか。待合室の密を避け、感染症のリスクを下げる意味でも、オンライン診療の活用による社会的なメリットは大きいと思います。
当初は、予約の取れない患者さんを診察できるようにしたいと考えて導入しましたが、オンライン診療を利用していくにつれ、定期的な薬の処方など緊急性のない診療をオンラインに移行することで、対面診療により多くの時間を取れるのではないかと考えるようになりました。理想的には、患者さんに合わせて対面とオンライン診療とを振り分けでき、オンライン診療への移行を適切に行って、対面での時間が必要な患者さんに時間が割けるという体制が望ましいと思います。
「音声のみの電話診療と比べると、映像を伴うほうが得られる情報量が多いためより安全に診療しやすいと思います」と話す舟串先生。COVID-19流行下の時限的・特例的な措置では、初診の電話診療も認められていますが、音声だけではわかることは非常に少ないため、舟串先生のクリニックでは初診の電話診療は実施していません。一方で、かかりつけの患者さんから電話で「いつものお薬をお願いします」と言われた場合には対応しています。
電話再診では、顔の見えるオンライン診療と異なり本人確認が難しいため、
という手順を設けています。また、支払いは次の来院時にまとめて請求しているそうです。
1)厚生労働省.第12回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会.資料1『第11回検討会の議論のまとめ』.令和2年11月13日 (2020年12月5日アクセス)
https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/000694435.pdfCopyright © mecompany,Inc. ALL RIGHTS RESERVED.