SCUEL(スクエル)
COVID-19禍の診療の実際

全国の先生方に聞く、COVID-19禍の診療の実際

第2回「COVID-19禍における患者側の変化」

本シリーズでは、COVID-19禍の診療実態について、全国のあらゆる診療科の先生方を対象にWEB調査を行った結果を次の3つのテーマに分けてお届けしています。

 

テーマ1 COVID-19禍における医療施設側の変化・対応

テーマ2 COVID-19禍における患者側の変化

テーマ3 COVID-19禍におけるオンライン/電話診療の実際

前回の「テーマ1 COVID-19禍における医療施設側の変化・対応」では、先生方がCOVID-19禍で様々な不安や負担を感じながらも、しっかりとした院内感染対策をとられていることをご紹介しました。

今回は、「テーマ2 COVID-19禍における患者側の変化」に関する調査結果をお届けします。

なお、本WEB調査は2020年10月26日(月)~2020年11月2日(月)の期間で実施されました。 調査にご協力いただいた先生方は合計211名で、担当診療科は、循環器内科、血液内科、リウマチ・膠原病内科および皮膚科がそれぞれ13.3%、整形外科と一般内科がそれぞれ12.8%で、それ以外が21.3%でした。 また、施設タイプは、病院が82.9%、クリニックが17.1%でした。


  • 「テーマ2 COVID-19禍における患者側の変化」

テーマ2では、COVID-19禍において患者側に起こった変化として、受診患者数の変化や通院/治療継続のために工夫していることについて、次の3つの質問から明らかにしました。


  1. 先生ご自身が、最近1ヵ月以内に診療した患者さんの人数をお知らせください。

    • 先生方が最近1ヵ月以内に診療した患者さんの人数は平均269.67人でした。

    • 診療科別によって差があり、最も多かったのは皮膚科の平均555.36人で、最も少なかったのは血液内科の127.32人でした。

  2. COVID-19によって、先生の受け持ち患者数に変化はありますか。前年同月と比べてどの程度患者数が増減しましたか。

    • 患者数は前年同月と比べ「ほとんど変わらない」が多くを占めるものの、全体の約30%が「減った」※1、約10%が「増えた」※1と回答しました。

      ※1:それぞれ1割程度、2割程度、3割以上「減っている」、もしくは「増えている」の合計とした。

      • 全体では、受け持ち患者数が「ほとんど変わらない」と回答した割合は57.3%、「減った」は29.9%、「増えた」は12.8%でした。
      • 外来初診患者が「減った」割合は36.5%と、4つのカテゴリの中で最も高い一方、「増えた」割合も14.2%と比較的高い傾向でした。
      • 一方、外来再診患者が「減った」割合は31.8%と、外来初診患者のカテゴリの次に高いものの、「増えた」割合は7.1%と低い傾向でした。
    患者数変化(前年同月比、患者の種類別)
    • 患者数の増減は、診療科によって回答の割合に差がみられました。

      • 受け持ち患者数が「減った」割合が高かったのは、皮膚科(35.7%)、循環器内科(32.1%)などでした。一方、一般内科(14.8%)では比較的低い割合でした。
      • 受け持ち患者数が「増えた」割合が高かったのは、整形外科(18.5%)などでした。一方、血液内科および皮膚科(各10.7%)では比較的低い割合でした。
    • 患者数の増減は、感染者数が多い※2エリア、やや多い※2エリア、少ない※2エリアにおいて、回答の割合に差がみられました。

      ※2:それぞれ感染者が多い(東京・神奈川・大阪)、感染者がやや多い(北海道・東京、神奈川以外の首都圏・愛知・京都・兵庫・福岡・沖縄)、感染者が少ない(その他の地域)エリアに分類した。

      • 受け持ち患者数が「減った」割合は、感染者数が多いエリアで32.3%、感染者数がやや多いエリアで33.8%と3割を超えている一方、感染者数が少ないエリアでは22.7%と低い傾向でした。
      • 受け持ち患者数が「増えた」割合は、感染者数が少ないエリアで18.2%、感染者数が多いエリアで15.4%であったのに対し、感染者数がやや多いエリアでは6.3%と低く、感染者数がやや多いエリアでは相対的に患者数の減少率が高い傾向でした。
    患者数変化(前年同月比、診療科およびエリア別)
  3. COVID-19禍において、患者さんに「通院」や「診察/治療の継続」をしてもらうために、どのような工夫をされていますか。

    • 患者さんに通院してもらうための工夫として回答の割合が高かったのは、「患者さんに対する感染予防対策の徹底(マスク着用/消毒液使用の推奨など)」の60.2%、「院内の感染予防対策の徹底(消毒液の設置/換気など)」の59.2%でした。

    • 診察/治療を継続してもらうための工夫として回答の割合が高かったのは、「通院頻度を下げる/長期処方を実施」(55.0%)であり、特に感染者数が多いエリアでは61.5%が実施していました。一方、「電話・オンライン診療」や「通院しやすい施設の紹介」といった、通院頻度を下げる以外の工夫をされている先生は少ない傾向でした。

    通院および治療を継続してもらうための工夫
    • 上記以外に、先生方に自由回答でご記入いただいた、通院および治療を継続してもらうための具体的な工夫は、大きく「コミュニケーション」、「感染予防対策」、「診察方法」の3つに分けられました。

    通院および治療を継続してもらうための工夫(自由回答、大分類)

    コミュニケーション 件数
    コミュニケーションの充実/丁寧な説明 47
    通院・治療の必要性の説明 44
    感染症予防対策 件数
    感染対策(マスク・消毒・体温測定など)の徹底 22
    ソーシャルディスタンスの確保 6
    待ち時間の短縮 6
    その他 6
    診察方法 件数
    次回予約の徹底 36
    電話診療 18
    通院頻度を下げる・長期処方 15
    電話確認(未受診時など) 11
    近隣施設の紹介 4
    オンライン診療 1
    その他 6
    • 上記の表で紹介した各分類の具体的な回答例を、下表にお示しします。

    通院および治療を継続してもらうための工夫(自由回答、具体的な回答例)

    内容 件数 コメント
    コミュニケーションの充実/丁寧な説明 47
    • 「困ったときはいつでも来てください・電話してください」と言っている
    • 大事なことは繰り返し説明する。また、なるべく褒めるようにする
    • 今後の見通し、採血がいつ頃必要か、薬を減らせる見込みがあるかなどを具体的に説明している
    通院・治療の必要性の説明 44
    • 今投与している薬の治療をやめると悪化する可能性が高いと繰り返し言っている
    • 通院が必要な理由(病状・病因・治療・効果etc)が理解されていると思うまで説明する
    次回予約の徹底 36
    • 再診いただきたい理由を伝え、こちらから予約を促す
    • 次回の来院についてコメディカルによる再確認
    感染対策(マスク・消毒・体温測定など)の徹底 22
    • 院内での感染対策(マスク着用、消毒の徹底)の提示と施行
    • 発熱患者の入り口を分けていることを強調している
    電話診療 18
    • COVID-19流行の状況によって電話診療も可能であると説明している
    • 電話診療による処方箋発行など、内服が途切れないようにしている
    通院頻度を下げる・長期処方 15
    • できるだけ受診頻度が少なくなるような処方、検査にしている
    • 別の科と受診日を同日にする
    電話確認(未受診時など) 11
    • 予定日に受診されなかった場合、電話する
    ソーシャルディスタンスの確保 6
    • 処置室には1人しか入れないなど、患者同士が近接しないように工夫
    • 駐車場の車で待っていただいて、順番が近づいたら電話呼び出しを行っている
    待ち時間の短縮 6
    • 待ち時間が長引くと通院を渋る方もおられるので、予約時間をできるだけ守る
    • 採血待ちなどで混雑しないように事前に検査だけで来院いただき、当日は診察のみにしている
    近隣施設の紹介 4
    • 通院/治療が困難であれば、近隣の施設をすぐに紹介する
    オンライン診療 1
    その他 6
    • 生活習慣に関してはあまりうるさく言わない
    • 可能な限り口腔内診察や聴診を控える

調査結果まとめ

  • 患者数は前年同月と比べて「減った」と回答した先生方は全体の約3割にのぼりました。減少傾向の程度は診療科によっても違いがあり、皮膚科や循環器内科などで大きい傾向でした。

  • 患者さんに安心して通院してもらうために、約6割の先生が「患者さんに対する感染予防対策の徹底(マスク着用/消毒液使用の推奨など)」、「院内の感染予防対策の徹底(消毒液の設置/換気など)」といった工夫を行う一方で、通院頻度を下げることで治療を継続してもらう工夫を行う先生も6割弱おられました。

いかがでしたでしょうか。先生の受け持つ患者さんのご状況と同じ、もしくは少し異なる点があったかもしれません。患者さんに治療を継続してもらうために他の先生方が行っている工夫などをご紹介しましたが、少しでも先生方の日常診療のお役に立つ情報があれば幸いです。

次回は、「テーマ3 COVID-19禍におけるオンライン/電話診療の実際」に関しての調査結果を配信させていただきます。

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