SCUEL(スクエル)
COVID-19禍の診療の実際

全国の先生方に聞く、COVID-19禍の診療の実際

COVID-19流行の長期化により、医療現場ではこれまで以上に感染症対策への取り組みが求められるなか、感染リスクを恐れた患者さんの受診先延ばし、オンライン診療といった新たな医療への挑戦など、これまでとは異なる対応や診療体制の構築が求められ続けているのではないかと思います。 一方で、他の医療機関がどの程度影響を受けているのか、そのなかで他の先生方が何に悩み、どのような対策をとっているのかについて、情報を得る機会は少ないのではないでしょうか。

そこでCOVID-19禍の診療実態について、全国のあらゆる診療科211名の先生方を対象にWEB調査を行った結果を以下の3つのテーマに分けてお届けします。今回は、テーマ1「COVID-19禍における医療施設側の変化・対応」の調査結果をお示しします。

 

テーマ1 COVID-19禍における医療施設側の変化・対応

テーマ2 COVID-19禍における患者側の変化

テーマ3 COVID-19禍におけるオンライン/電話診療の実際

WEB調査の対象は、全国211名の先生方で、調査は2020年10月26日(月)~2020年11月2日(月)に行いました。

  • 調査対象211名の先生方がご勤務の医療施設は、一般病院※1が39.8%で最も多く、国立病院・公立病院(国立病院機構・都道府県立・市町村立・労災病院)が22.3%、大学病院(国公立大学病院・私立大学病院)が20.9%、医院・診療所・クリニックが17.1%でした。

    1. ※1:国立病院・公立病院(国立病院機構・都道府県立・市町村立・労災病院)、大学病院(国公立大学病院・私立大学病院)を除く法人・個人・日赤・済生会・厚生連・共済・国保・健保などの病院

  • 診療科・標榜科は、循環器内科、血液内科、リウマチ・膠原病内科、整形外科、皮膚科、一般内科が各13%前後と均等であり、その他が21.3%でした。

    医療施設のタイプ
    診療科・標榜科
  • 調査対象211名の先生方がご勤務の地域は、関東地方(27.0%)、近畿地方(21.8%)、中部地方(17.1%)の順に多く分布していました。

    医療施設の所在地

「テーマ1:COVID-19禍における医療施設側の変化・対応」

テーマ1では、医療施設側の変化・対応として、先生ご自身または他スタッフが感じられている負担や不安の内容、負担や不安を解消するために求めることや、患者さんに通院してもらうための感染症対策について、次の3つの質問から明らかにしました。


  1. 先生ご自身または他スタッフ・施設において、COVID-19により負担や不安を感じることはありますか。

    • 多くの先生方が、様々な不安や負担を感じていらっしゃいました。

    • 不安や負担を感じる内容としては、「院内感染に対する不安」(86.7%)、「(COVID-19以外の)通常診療/治療のやりにくさ」(84.8%)、「施設の経営状態の悪化」(79.6%)の順に高い割合※2でした。

      ※2:「不安や負担を非常に感じる+ある程度感じる」の割合

      COVID-19により負担や不安を感じること
    • 診療科によって、不安や負担を感じている内容に差がみられました。

      • 「業務負担の増加」の項目で割合が高かったのは、血液内科とリウマチ・膠原病内科(各92.9%)で、低かったのは整形外科(59.3%)、皮膚科(64.3%)でした。
      • 「院内感染に対する不安」の項目は、すべての診療科において80%以上の割合でした。
      • 「医療スタッフの人員不足」の項目で割合が高かったのは、リウマチ・膠原病内科(82.1%)、血液内科(78.6%)で、低かったのは皮膚科(42.9%)、整形外科(51.9%)でした。
      • 「患者さんとのコミュニケーション」の項目で割合が高かったのは、血液内科およびリウマチ・膠原病内科(各64.3%)で、低かったのは整形外科(44.4%)でした。
      • 「(COVID-19 以外の)通常診療/治療のやりにくさ」の項目で割合が高かったのは、血液内科(92.9%)で、低かったのは整形外科(74.1%)、皮膚科(75.0%)でした。
      • 「医療スタッフ内のコミュニケーションのとりにくさ」で割合が高かったのは一般内科(51.9%)、循環器内科と血液内科(各50%)で、低かったのは整形外科(29.6%)でした。

    *各割合は「負担や不安を非常に感じる+ある程度感じる」の回答率を示す

    COVID-19により不安や負担を感じること(診療科別)
  2. COVID-19禍でも先生ご自身または他スタッフが負担や不安なく働くために、どのようなことがあると良いと思われますか。

    • 負担や不安なく働くためにあると良いと思われているものは、「感染予防対策のための物資の支給」(65.4%)、「診療報酬の見直し」(57.8%)、「人員体制/シフト管理の見直し」(46.0%)の順で高い割合でした。

    • これ以外の自由回答での結果では、「業務負担の増加に報いる報酬体系や休暇取得率の向上」「感染対策に対する補償」といった個人や病院への待遇・補償に関するものや、 「感染拡大予防対策やPCR検査のさらなる普及」といった医療施設側で行える対策、「COVID-19に罹患した方を差別しないこと」「感染の勉強会実施」といった市民・医療スタッフ双方におけるCOVID-19感染に対するヘルスリテラシーの向上に関するご意見が多くみられました。

    医療スタッフが負担/不安なく働くために必要なこと
  3. COVID-19感染を懸念して通院を控える患者さんに「通院」してもらうために、どのような工夫をされていますか。

    • 患者さんに通院してもらうための工夫は、「患者さんに対する感染予防対策の徹底」(60.2%)、「院内の感染予防対策の徹底」(59.2%)、「待合室や診察室のスペース/レイアウトの工夫」(38.9%)の順で高い割合でした。

    患者さんに通院してもらうために行っている工夫

調査結果まとめ

  • 先生方は、COVID-19禍で通院を控える患者さんのために、「患者さんに対する感染予防対策の徹底」、「院内の感染予防対策の徹底」、「待合室や診察室のスペース/レイアウトの工夫」など、患者さん自身にしっかりと対策を講じてもらいつつ、院内にもしっかりと感染対策を行っていらっしゃいました。

  • その一方で、COVID-19禍の診療において、多くの先生方が、様々な不安や負担を感じていらっしゃいました。

    • 特に多かったのは、「院内感染に対する不安」、「(COVID-19以外の)通常診療/治療のやりにくさ」、「施設の経営状態の悪化」などでした。
    • 診療科によって、不安や負担を感じている内容に差がみられました。
  • 先生や他のスタッフが負担や不安なく働くために求められていることは、「感染予防対策のための物資の支給」、「診療報酬の見直し」、「人員体制/シフト管理の見直し」などでした。

いかがでしたでしょうか。先生の医療施設での状況と同じ部分、もしくは少し異なる点があったかもしれません。他の先生方のご意見や感染対策の工夫など、少しでも先生方の日常診療のお役に立つ情報があれば幸いです。

次回は「テーマ2 COVID-19禍における患者側の変化」に関しての調査結果を配信させていただきます。

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