新型コロナウイルス感染拡大の影響により、オンライン診療が注目されています。しかし、この流れは一時的なものなのでしょうか?日本全国におけるオンライン診療の実施状況をまとめ、導入をお考えの先生に参考となる最新の情勢をお届けします。
図1 オンライン診療対応医療機関の全国マップ
2019年におけるオンライン診療の普及率は、オンライン診療料の施設基準の届出でみると、病院51.4%、診療所47.6%であった一方、実際にオンライン診療を行っている施設は、病院24.3%、診療所16.1%に留まっていました1)。 しかし、新型コロナウイルスの感染拡大を契機として、オンライン診療への関心が高まりをみせています。このような背景のもと現在の実施状況をまとめました。
2020年6月23日現在、電話診療を含む遠隔診療の実施医療機関数2)は全国で15,000を超え、都道府県別では、1位 東京都(1,966)、2位 愛知県(1,049)、3位 神奈川県(901)、4位 大阪府(848)、5位 北海道(793)と、いずれも大都市を有する都府県が上位を占めています(図1:マップ参照)。 また、この実施医療機関数を人口3)あたりでみてみると、最も多い山形県では1,000人あたり0.32施設、最も少ない沖縄県で1,000人あたり0.04施設と地域によってバラつきがみられます(表1)。先生のご施設のある都道府県の現状はいかがしょうか?
1位 | 山形県 | 11位 | 島根県 | 21位 | 秋田県 | 31位 | 茨城県 | 41位 | 山口県 |
2位 | 徳島県 | 12位 | 群馬県 | 22位 | 愛知県 | 32位 | 宮城県 | 42位 | 滋賀県 |
3位 | 高知県 | 13位 | 新潟県 | 23位 | 兵庫県 | 33位 | 神奈川県 | 43位 | 福岡県 |
4位 | 長野県 | 14位 | 青森県 | 24位 | 大分県 | 34位 | 埼玉県 | 44位 | 三重県 |
5位 | 福井県 | 15位 | 広島県 | 25位 | 宮崎県 | 35位 | 大阪府 | 45位 | 岡山県 |
6位 | 長崎県 | 16位 | 岐阜県 | 26位 | 和歌山県 | 36位 | 福島県 | 46位 | 京都府 |
7位 | 富山県 | 17位 | 奈良県 | 27位 | 千葉県 | 37位 | 栃木県 | 47位 | 沖縄県 |
8位 | 石川県 | 18位 | 北海道 | 28位 | 佐賀県 | 38位 | 岩手県 | ||
9位 | 香川県 | 19位 | 山梨県 | 29位 | 静岡県 | 39位 | 鹿児島県 | ||
10位 | 鳥取県 | 20位 | 東京都 | 30位 | 愛媛県 | 40位 | 熊本県 |
厚生労働省.新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえたオンライン診療について.I 対応医療機関リスト(2020年6月23日アクセス)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/rinsyo/index_00014.html 総務省統計局.人口推計(2019年(令和元年)10月1日現在).第2表 都道府県,男女別人口及び人口性比―総人口,日本人人口(2019年10月1日現在) (2020年6月23日アクセス)https://www.stat.go.jp/data/jinsui/2019np/index.html をもとに作成
オンライン診療に対するニーズや必要性は、患者さんやご家族の生活スタイルの多様化、高齢化に加え、深刻化が懸念される医師の勤務環境、医療資源や医師数の不足・偏在などから4),5)、日本各地でますます高まるとみられています。これらの背景を受けて、現在の新型コロナウイルス感染拡大による時限的・特例的措置のみでなく、2020年度の診療報酬改定6)でも、オンライン診療普及への後押しを行っています。この改定には、事前に必要とされる対面診療期間の6ヵ月から3ヵ月への緩和、緊急時の対応や医師の所在に係る要件の見直し、遠隔連携診療料の創設などが含まれ、オンライン診療の活用に向けた体制整備が着実に進められています。さらに、オンライン診療を推進するための新たな補助事業として、情報通信機器等の環境整備にかかる費用に対する支援も地域ごとに開始されています7),8)。
2019年に行われた医療機関に対するアンケート調査によれば、医療機関がオンライン診療を実施しない理由として、「患者の希望がないため」が最も多く挙げられています。次いで、病院では「オンライン診療に用いる機器やシステムの導入・運用コストが高いため」、診療所では「対面診療の方が優れているため」が理由として挙げられています1)。オンライン診療の普及における課題として、経済的負担、機器への慣れ、セキュリティなどが挙げられることが多いようです1),9)。 一方、同じく2019年に行われた患者さんに対するアンケート調査によれば、オンライン診療の受診経験のない方は「できるだけ対面診療を受けたい」が最多でしたが、受診経験がある方では「できるだけオンライン診療を受けたい」が最多でした1)。オンライン診療による受診経験のある患者さんでは、待ち時間の短縮など時間の効率面、受診の身体的負担軽減の面から有用性や満足感を感じているようです1),10)。 オンライン診療の普及に向けては、医療従事者から患者さんへの働きかけに加え、診療の基盤となる医療機関側の導入・運用にかかる費用や研修体制の充実、患者さん側への導入支援などへのさらなる対応が望まれています10)。
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